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東京高等裁判所 昭和28年(ネ)1618号 判決 1954年11月04日

控訴人 原告 加須土地建物株式会社

代表者取締役 野本秀一

訴訟代理人 近藤平松

被控訴人 被告 今野吉郎

訴訟代理人 岡田喜義

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用を控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取消す。控訴人が東京都台東区坂町一番地の一宅地三十一坪八合六勺について普通建物所有の目的で、昭和六年三月十五日から期間の定めのない、賃料公定賃料、毎月末日払という借地権を有することを確定する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文第一項同旨の判決を求めた。

当事者双方の陳述した主張の要旨は、左記のほかは、原判決の事実摘示(但し、控訴人は工作物の収去土地明渡の請求を当審において取下げたから、その関係部分と第一審被告広瀬為蔵に関する部分を除く)と同一であるからここに引用する。控訴代理人は、控訴人の譲受けた賃借権は期間の定めのないものであつた。右賃借権については登記はなく、又戦災で焼失した控訴人所有の建物については保存登記はなかつたと述べた。被控訴代理人は、控訴人主張の本件土地に対する賃借権は登記がなく、焼失した建物についても保存登記がなかつたのであるから、控訴人の本件土地に対する賃借権は罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条の適用を受けないものであると述べた。

当事者双方の提出援用した証拠方法とそれに対する認否は、下記のほかは、原判決の摘示と同一であるからここに引用する。控訴代理人は新に、甲第八号証の一、二、第九及び第十号証を提出し、甲第二、第三号証を撤回した。被控訴代理人は当審で新に提出された右甲号各証の成立は不知、右甲号証の撤回には異議がないと述べた。

理由

本件宅地を含む七十八坪七合七勺は元訴外佐久間利治の所有に属していたが、同人は昭和三年六月三十日訴外野本三之助に右宅地七十八坪七合七勺を普通建物所有の目的で、賃料一ケ月金五十円六十銭、毎月二十八日払、期間昭和十年六月三十日まで(控訴人主張の期間の定めのない旨の主張については証拠がないが、借地法第一一条第二条によつて期間は三十年となる)の約で賃貸していたが、佐久間利治は昭和二十二年五月二十二日右宅地を被控訴人に譲渡したことは、いずれも当事者間に争がない。

原審証人平野藤五郎の証言によつてその成立を認めることのできる甲第四号証、原審証人大橋忠雄の証言によつてその成立を認めることのできる甲第七号証及び、原審証人大橋忠雄、平野藤五郎の各証言によれば、控訴人は戦災前に佐久間利治の承認を得て、野本三之助から上記宅地の賃借権を譲受けたことを認めることができ、外に右認定を動かすことのできるなんの証拠もない。控訴人が昭和二十一年十一月七日に右宅地のうち二十二坪八合二勺を佐久間利治に返還したことは自ら主張するところである。控訴人が上記宅地上に木造トタン葺二階建家屋三棟を所有しており、右家屋はいずれも焼災によつて焼失したが、控訴人の上記宅地に対する賃借権については登記なく、右各家屋についても保存登記がなされていなかつたことは当事者間に争がない。従つて、控訴人の上記宅地に対する賃借権は元々賃貸人に対しては別として、その後の上記宅地の所有者に対しては対抗し得ない関係にあつたものであるが、罹災都市借地借家臨時処理法第一〇条によつて、昭和二十一年七月一日から五箇年内に上記宅地に対し所有権を取得した者に対し対抗し得る――被控訴人がそれに該当する者であることは上記認定のとおりである――にいたつたかどうかが問題になる。しかしながら、同条は罹災までは第三者に対抗し得る賃借権を有していたものが、登記ある建物が戦災によつて焼失し、一応借地権の対抗力を失つているような者などを保護してその借地権に対し対抗力を付与したものに止まり、既に戦災前に対抗力を有していなかつた借地権者の借地権までをも新に保護する趣旨ではないと解するを相当とする。それ故、控訴人の本件宅地に対する賃借権は同条によつても被控訴人には対抗し得ないものといわなければならない。従つて右賃借権の確認を求める控訴人の本訴請求は、その他の点について判断するまでもなく失当であるから、これを棄却すべきものであり、これを棄却した原判決は理由において異るも結局は正当であるから、民事訴訟法第三八四条第二項によつて本件控訴を棄却し、控訴審での訴訟費用の負担について同法第九五条、第八九条を適用し、主文のように判決する。

(裁判長判事 柳川昌勝 判事 村松俊夫 判事 中村匡三)

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